ito_kei2007-01-13


今日「相談なんですけど」で突然やってきたお兄さん(私よりは多分若い)
言いたいことは、
おうちにいる猫が発情した様子、避妊手術をするべきか、もう妊娠しちゃっているのではないか。


※猫は発情して、交尾したらほぼ妊娠します。
 一般病院では一ヶ月くらいするとエコーで確認できます。


多分お話からすると発情ではあるよう。外に出るということ。でも妊娠は避けたい。
「じゃあ、しばらくは室内に入れておけばいいんじゃないですか?」(会話は院長がしました)

そうすると、
「いや、うちの猫じゃないんで。野良猫なんです。ただ餌やってるだけで、そのうちいなくなると思ってたけどいついちゃったみたいで。
前も同じような感じだったんで、オスだったから出て行ってしまったままだったから。
外で生きていくならオンナとして生きて行って欲しいじゃないですか。
外で生きていくなら避妊はしたくないし。
でもこのまま家にいついて生まれても困るし。野良猫ふえちゃうじゃあないですか。
で避妊を考えているんですけど、でも今妊娠してたら、おなかの中の子供かわいそうだし。」


結局何をどうしたいの!?
と思ってしまいました。
終始「野良猫なんで、飼ってるわけじゃあない」と連発
でも「外に野良猫が多いのはイヤだ」とも言います。
でも、外で生きていく分には生んでてもいいというし。


責任は自分で負いたくはないし、自分で捨てるのもいやだし、自分の知ってる範囲での殺生はいやだ、というような感じ。
できたら勝手に出て行って欲しいのかな。
生むなら外で生んで、おうちには連れてくるな、みたいな。
でも「自分は餌をやってやってる」という。


もっと責任持ってくれ!!
と言いたかった。
いや、飼ってるわけじゃないって言われそうだけど、
そうじゃあないでしょ。
「餌あげてる、自分いいやつ」っていいところばかり見ている感じ。。


オスだから出て行って放浪してしまうってイメージも正直おかしい。
ほとんどが事故や感染症やらでいいことなんてない。
戻るに戻れない状況だってある。
全部「オスだし、野良だから放浪するのは当たり前」という認識は本当困ります。
そして、いずれはいなくなると見込んで(?)半端に餌をあげるのもすごく微妙。
居心地よければそりゃあ居着くよ!
また、ヒトと違って本能的なものだから「オンナとして…」というのもかなり気になる。
擬人化しているような…。


病院では、発情中の避妊手術はできれば避けたいとしています。
(子宮が脆弱になっているので)
妊娠中も、できれば、これはヒトとしてやりたくないに近い。
どちらも技術的には出来ないわけではないのです。
この辺は理解いただけていました。



妊娠してるなら子供がかわいそうなのでその時点の手術はしたくない
でも子供の面倒(里親も含め)は出来ない
このまま家にいつくなら避妊はしたい
でも今多分発情してる
…なら家にいていただくしか妊娠を避ける方法はない
でも飼ってるわけじゃないから家だけには出来ない(かわいそうとかそういう訳ではないようだった)


中途半端な責任しか持ちたがっていないようで、悲しい気持ちです。
生き物、命を預かるってそんな簡単じゃあないし、もし病気になったらどうするんだろう。
尿石とかだったら処方食だけになる、そうなったらどうするんだろう。
きっとそこまでは知らないってなっちゃう気がする。


院長私ともども、「勝手なもんだなあ…」と溜息でした。


本当、今のご時世猫にとっても外の世界って危ない。
治らないウイルスの病気もあるし、他にも感染症もいっぱい。交通事故、あるいは悪意のあるものまで。
あえて言うなら猫が捕食してる小動物も影響は少なくはない。
色々な意味でも、外飼いは勧められない。






話変わって


今日に限ったことではありませんが、年末あたりから噛まれ回数が増えています。
生傷が絶えません…。
年末は顔(というか顎)を噛まれて歯型が残り、指も爪の根元が割れた。
そんな次の日同じ場所また別のコに噛まれた。
猫の爪が引っかかるのはもはや言うまでもなし。
(猫の場合は襲ってくるとかより、もがいて逃げようとするときに爪が鋭いので切れてしまうときや
キャリーからだそうとするときしがみつきなどによるものが多いです)


今日も採血まではおとなしかった子が我慢の限界に達したか、採血終了したところで噛まれました。
こういうときって、よくテレビでやってる警察犬みたいにがぶっと噛み付いて離さないというもんじゃあなくて
毎秒3回くらい噛まれます。
恐怖限界の行動なので仕方ないのですが。
しかしかなり痛い。
「あ、大丈夫ですよ〜」といいながら血がだらだら垂れてる光景もおかしかろう。
その瞬間は割と平気だけど、作業途中だとあちこちに血がついてしまうのも困るし、後から力入りにくくなるので気をつけたいものです。
大怪我して仕事にならなくなったら元もコもありません。


しかし「仕事中」という気持ちはすごいもんで。
かなり痛いのに平気な顔でいられます。
爪割られたときは後から相当痛かったけど、一連の診療は済ませられました。
大騒ぎしたら飼い主さんがおろおろしちゃうし、飼い主さんが悪いわけじゃあない。
ワンコは恐怖でいっぱいいっぱいだから、早く済ませてあげないと。


ということで、写真は今日の私の手です。
左手はワンコに噛まれたもの、右は昨日ニャンコの爪が引っかかったものです。
色々な獣医さんの手が傷跡だらけなのを見るけど、こうしてできていく訳ですね…。


獣医を目指している方、アニテク志望の方、特に女性かもですが、なかなか本当に傷は絶えません。
心してくださいね〜