どうですか!これ!

かなり気合い入れて作りました。
タヌキの幼獣の全身です。


春にネコに襲われていた子タヌキということで搬入されましたが、後頭部には歯型がはっきり、意識ももうろうとして
激しくけいれんを繰り返していました。
助けることはまず不可能。もっても数時間程度ではないでしょうか。
まだ離乳直後のいわゆるかわいい盛りです。
体格もよいし、他にけがをしていることもありません。


(写真の矢印はちょうど犬歯の穴があったところです。頭骨もまたきちんとつながっていないので、そこから砕けていました。陥没というべきか)

ネコの咬傷によるものは結構多くあります。
そして予後も悪いケースが多い。
しかしこうもはっきりと骨にまでその傷跡が出るのはあまりありません。
この個体は解剖したら、頭骨も破壊されていました。当然、今の獣医学領域では助けることは出来ません。
頭骨のはっきりとした歯の穴や、割れた部分を見て、このままを残して伝えられたらと思いました。
出来る限り標本然とした格好じゃなく、生きていたころそのままにあってほしい。

そんなこだわりで写真とほぼ同じ形にしてみました。
(若干写真気持ち悪いかも、すみません。サイズが変えられず…)
なんか違うところに向かっている気がしなくもないですが、作りたいのは標本じゃあなくて、知ってもらい興味をもってもらうための教材です。


ネコの影響はあまり重要視されていない気がします。
奄美や沖縄など、離島では希少な生き物を襲うということで適正飼育をことさら強調できますが
日常ネコが襲う生き物、普通種も相当な数にのぼると思います。
重要視されなくていい問題なのか、ずっと疑問です。
ネコの外飼いをすすめない理由には、ネコ自身の感染症や事故などのリスクのほかにも
ネコが他の生き物に及ぼす影響というのもあっていいと思うのです。
うちの子はそんなことをしないと思う方も多いですが(我が家のねこも絶対出来ない気もしますが…)ネコにはこれだけの能力があるということです。



幼獣となると、まだ骨同士もつながっていないし一本の骨自体も軟骨が多いです。
いつも通りにやってしまうとばらばらどころか、崩れ散ってしまいます(経験済)
骨のプロの方々にやり方を教えてもらって、完成に至りました。
要は体はつながったままに固めただけなのですが…
ちょっと黄色い(脂が染み出る)のはこれ以上やって崩れたら怖いのでした。
出来てしまえば結構普通の標本よりも持ち運びが可能でした。


かわいそうという意見も、気持ち悪いという意見も
手にとって見てみるからこそわかることも多くあります。
あえてこういう形で残ってもらうことにしました。
手の施しようがなかったむなしさと、この個体の無念と思ってもらえたらいいのです。



そして!これ持って大阪にうちいって来たのでした!
骨サミット、今度書きます。