ito_kei2010-05-21



今日は処置中(正確には…処置じゃないけど…)に小型猛禽に思いっきり手を握られた。


というとなんだか意味分からない表現ですが、彼らの一番の武器である足の爪
哺乳類だったら噛みつかれるところを、彼らは足を出してきます。
小型と言ってもかなりの力があります。
手に穴。食い込む爪「あ、やられた。刺さった。」という瞬間から、基本一人だったら普通に頑張ったってはずせません。
頑張るとさらにぎゅっと力が入って刺さるばかりです。
小型種だったからまだ全然まし。
多分…イヌワシクマタカくらいになったらマジ穴になるでしょう。


処置中、相手(動物)がいるという状況だと不思議なもので、割と冷静
握られたまま「いいからそのまま進めていい」と周りがびっくりしてても言えちゃう不思議。
保定されているだろうと思って、つかみかかれるところに不意に手をやったこっちが悪い。
基礎中の基礎のミス。
小型種だからという隙は多分そのうち痛い目にもっとあう。
気をつけないと…




痛そうだと言われても、向こう(鳥)の方が断然痛かろう。
良かれと思って自宅で長期収容、ボロボロになってから連絡がくる。
擬人化はしたくないけど、監禁されてたような日々だったんじゃないか。
厳しい言い方をしてしまえば、鳥からしたら大きな迷惑。親切心の押しつけ。
生きてりゃいいってもんじゃない。
良かれと思ったってちゃんとした方法も何もかも知らないままじゃ、虐待みたいなものになってしまう。
そういう典型。
羽はすれてボロボロ
眼は栄養の偏りで白く濁ってよく見えてない
折れた骨はそのままに固まってもう飛べない
口の中にはストレスや収容してた場所の衛生状態を反映してか、真菌(カビ)感染
これで…「野生復帰出来ないなら引き取りたい」って言われてもはいどうぞって言えない。
さいごの一番いやな役回りが、ここになる。




その直後くらいに心肺停止、すーっと動かなくなった。
蘇生の努力はしなかった。
何かが抜けるような、急に羽の色艶さえもさーっと褪せるかのような瞬間。



体ボロボロの体力の限界、呼吸器もやられてる。さらに暑い中長時間移送、そしていじくりまわされる。
死を持って逃げると言いわけするけど、当然の結果。


私の手なんてどうでもよかった
(いや、仕事にならなくなると困るので、そうも言えないけど…って、どっちやねん)
最期の無念をぶつけてくれて全然よかった。
何にも全くされない終わりの空虚しさより、よっぽど。
そんなのも余計なお世話だけど。


死んでしまったら終わりとは思わない
そういう場所だから
次の道程が始まる。始まらせる。
血液サンプル、外部計測(←生きててもするものですが)病理解剖、DNAサンプル、標本化、標本の活用化
安らかに…なんてさせられない。
ここに来た以上は、次につながるものに。そういう意味での犠牲になってもらうしかない。




手の怪我なんてそのうち治る。
傷跡が残ってくれた方がいいとも思うときがある。
あっという間にことが済んでしまえばしまうほど、記憶も薄い。
紙一枚のデータよりも手に取れる標本の方が記憶に残る
跡になったら「こんな風に傷になってしまう」ってことも伝えられるのに、なんて。
まあ、私の手の傷跡のほとんどってうちの猫ですけど…
というか、言うほどひどい傷じゃないです、パソコン普通に使えております。